今年は3月になっても寒い日が続きますね。 朝起きると外がなんか明るくて、積もった雪に驚かされます。 え、春は?と思いながら、重たい雪かきに汗をかきました。そんな時に限って、足が肉離れを起こしたりして。年のせいなのでしょうか。日頃の行いでしょうか。
それはさておき、昨年の11月に山鋸の修理のご依頼をいただいたので、紹介させていただきます。
長野県茅野市のお客様です。お父様から受け継がれた鋸ということですが、これから山の管理をされるのに使われるということでした。お父様が目立てをされながら使われてきたようです。山鋸は刃が大きく、目立てのしやすい鋸です。昔の鋸は良い鋼が使われていて長切れもしますので、メンテナンス面から見ても使いやすい鋸になります。
これからはご自分で目立てをしながら使っていきたいというご要望でした。道具を大切にされる方に出会えて、とても嬉しかったです。沢山お持ちのコレクションの中から、今回は3本だけご自分では目立ての難しいものをお預かりさせていただきました。
よく見ると刃の形がまちまちなのがわかります。右手で擦る下刃が擦りすぎていて刃が反り、低くなっています。右利きの方は右手が力が入りやすいので、こういう症状が出ることがあります。こうなると、まっすぐ切ることが出来なくなり、切れ味も悪くなります。ヤスリだけでは修正することができませんので、一度刃を半分落として切り替えます。
最初に、刃の先端をざっくりと落とし‥‥
刃の高さを揃えます
刃先の切り落とし完了です。
刃先を切り落とした分と同じくらい、赤いラインのように切り込みを入れていきます。
下刃を切り込み‥‥
背を切り込みます
切り込みが完了しました。これでおおまかな刃の形ができました。これからヤスリで刃の形を整えます。
刃の形・深さ・上目の大きさをヤスリで整えながら、鋸刃を研いでいきます。
ひずみを直し‥‥
アサリを出します
修理前
修理完了
残り2本も同じように施工します。
修理完了しました。少し鋸幅は狭くなりましたが、これでまた何十年か使用可能な鋸になります。お父様から受け継がれた大切な鋸が、また息を吹き替えしたようでとても嬉しいです。
弊社では今回のような山鋸だけでなく、大工用の両刃鋸の切替もさせていただいております。ご愛用の鋸の刃が続けて何本か欠けてしまったなど、使用不能になってしまった鋸も復活させることが可能です。もちろん、両刃鋸の場合は、精密に刃の高さ・ピッチを合わせる必要がありますので、専用の機械を使用しての施工になります。ご必要でしたらご相談ください。
目立てのワンポイント
目立てをご自分でされる時には、力を入れすぎず、元の刃の形をなるべく変えないことが大切です。上目だけを研ぐだけで、切れ味が復活しますので、最初は上目だけの目立てをお勧め致します。
何度か目立てをしているとアサリも無くなり、刃の深さも浅くなってきますので、目立てのご依頼をいただければと思います。
目立てクリニックもさせていただいております。思うように目立てのできないときには、鋸の写真を送っていただければ、アドバイスできるかもしれません。
春までもう少しでしょうか。季節の変わり目になりますので、ご自愛ください。 最後までご覧くださりありがとうございました。
上目の目立方法はこちらをご覧ください